2024/04/10 16:29

OH LOLAを始めた2020年頃から着想していた「Piece of Table」という作品が、2022年に完成しました。
1つのテーブルと、7つの1輪挿しを行き来するオブジェです。1セットしか制作しておらず、これまで、長野と東京で展示をしてきました。
もっといろんな場所でいろんな方々に見ていただきたいのですが、作品ができるまでを一度まとめておこうと、この記事を書いています。

もうそれがいつかは忘れてしまいましたが、ふと、この作品のアイデアが浮かびました。「いくつかの1輪挿しが組み合わさって、ひとつのテーブルという、人が集いコミュニケーションを取れるツールになったら面白いな。」そんな単純な発想です。

その、ふと浮かんだアイデアと日々、脳内で向き合いながら、少しずつ具体化させていき、まだどうやってつくるかも分からないまま、いつかこの作品をつくる時のために、CADを学び、なんとか設計図を完成させました。それがこちら。

当初はこの3Dデータで作品としては完成、と考えていました。データ上で着色もできるし、素材もマッピングできる。
でもそんな時にふと、インスタでひらすた磨いたピカピカなアクリルを愛おしそうに撮影しアップしているアカウントに出会いました。それが、今回この作品の製造を担ってくださった、株式会社常盤さんのアカウントでした。そのアカウントから溢れ出るアクリル愛にとても興味を持ち、「ここなら、Piece of Tableをつくってくれるかも」と、失礼ながらDMでご連絡しました。突然にも関わらず丁寧に対応してくださり、すぐにオンラインでのご挨拶の場をつくっていただけました。

湯浅社長も自ら参加してくださって、この作品のコンセプトをうんうん、と聞いてくださいました。
そして「とてもワクワクしました。ぜひお手伝いさせてください。」とコメントを頂き、まさかの「Piece of Table」の制作がスタートしたのです。自分から相談しておきながら”まさかの”とは失礼なことですが、正直断られる、と思っていました。だから、前向きにご検討くださった時には嬉しさと共に、驚きもありました。でもこうして、突然動き始めたのです。

2回目の打ち合わせで「このデザインでは、うまく自立しません。」とアドバイスしてくださったのは、常盤さんのグループ会社で、構造設計を専門とする株式会社月歩の山田さん。「天板が重力で四方に開いてしまいます。でね、私この前ピザを食べながら思いついたんですが~」と、テーブルに組んだ際に、美しく収めるためのデザインを提案してくださいました。ベースのデザインを崩さず、かつ課題を見つけ改善案を提案してくださる姿勢はまさにプロフェッショナルでした。

何度かこういった打ち合わせをリモートで行い、制作が始まりました。制作後は、「これからアクリルの加工に入ります」「いい感じです」と途中経過をご連絡いただけましたが、いつも写真はついてきません。当時、コロナ禍真っただ中ということもあり、直接伺うことも遠慮していたため、制作が始まっても一度も直接ご挨拶に伺えないまま数か月が経過・・・・。

そして、突然の湯浅社長からの電話。
「小林さん、完成しました。滋賀の工場まで取りに来てください。いいのができましたよ。」と。
電話口の様子から、社長のうれしそうな様子が伝わってきた時にはもういてもたってもいられず。
すぐに、写真家の丸田平さんにお声がけして、この作品の対面に同行してもらうよう、お願いしました。(面白話ですが、「来週、一緒に滋賀県に行ってもらいたいです。僕の車で一緒に。」と、ちゃんとした面識もないままに、でも直感的に平さんに写真を撮ってほしいと思い、勢いのままお誘いし2つ返事で快諾してくださって叶った撮影でした。ほぼ初めましてで、約4時間の道のりを男二人、あれこれ語りながら旅をして、何なら京都に泊まって翌日もデートまでしてしまい。とても良い思い出です。)

初めての滋賀県、草津市。常盤さんの本社は京都ですが、琵琶湖に近い草津市に工場があり、ここへ訪問しました。
到着すると、社員さんが優しい笑顔で出迎えてくれました。「お疲れ様です。上に準備してありますので、さあ。」と。
社員さんの様子から、常盤さんの社風が伝わりました。リモートながらに感じていた、優しくて頼りがいのある様子。社長のみならず、社員さんからもその様子が伝わるのは、本当にすごいことだと思います。

そして案内された3階へ上がると。そこには、10名弱の方々。画面越しにお話ししていた方のほかにも、初めてお目にかかる方が数名か。一緒に、見学にこられたのかなと思っていると、「今回、この制作に関わったメンバーです」と湯浅社長より紹介され、驚きました。まさか、こんなにもたくさんの方が、この作品の制作のために関わってくれたとは。

こちらが社長の湯浅さん。Piece of Tableは、この方との出会いがなければ完成しませんでした。


ブルー&白黒のユニフォームが常盤のみなさん。

赤のユニフォームが月歩のお二人。(向かって右がアイデアマンの山田さん)

「さあ、ではさっそくお披露目しましょうか」と、慣れた手つきでが箱から開封されていきます。




この真鍮の試験管も、制作してくださる工場を探してくださって、形に。



想像していたより、何倍も美しかったです。ただただ「すごい綺麗ですね、本当にすごいです」と。

関わってくださったスタッフさんの中にも、完成したものは初めて見る方もいて、一緒に「きれいですねえ」と鑑賞。何とも不思議な感覚の時間でした。

「では、次はテーブルに。」
1輪挿しに形になっていたものが、手際よく組み上げられていきます。




もうこの時点で私はいち、鑑賞者。「す、すごいですね。なんだこりゃ」と、自分でもどういう感情か分からなくなってしまいましたが、いつか脳内で描いていたオブジェが、想像をはるかに超えた作品として目の前に。本当に、完成してしまいました。

制作の過程を、くまなく説明頂きました。真鍮試験管について。

こういったブロックから、天板部分を削り出しています。



工場には、たくさんの試作の跡も。



最後の磨きはこの機械でのバフ研磨。


本当にたくさんの工程の中に、試行錯誤や工夫、素晴らしい技術が集積されていて、改めてとんでもないことをお願いしてしまったのだと、よく分かりました。本当に本当にありがとうございます。

工場での説明から戻ると、窓から光が入り、きれいに光っていました。


あっというまの数時間。最後にみなさんと写真を。

と、この作品のことを綴っていたら、インスタグラムの常盤さんアカウントでは「4月で設立35周年を迎えました」とのお知らせが。偶然にも、よりうれしい記録となりました。

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Piece of Table / 2022
集合体における個の重要性。
この透明なテーブルは、実は7つのパーツに分かれています。それぞれがフラワーベースとして使えるように設計しており、独立した個体として存在することができます。そして、これらのパーツを組み上げることで、ひとつのテーブルが完成します。
個々のパーツは、それぞれが独自の役割を果たすことができますが、一緒になることでより大きな美しさを生み出すことができます。それぞれが異なる形や色を持つフラワーベースが、一つのテーブルとして完璧に調和している様子は、集団を構成する個体が互いに支え合い、協力することで、より良い結果を生み出すことができることを表現しています。
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撮影(スナップ):丸田平
撮影(作品撮影):平林岳志
デザイン:小林聖也

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